花粉症の治療をしただけなのに、喘息まで軽くなった?
そんな声が聞かれるようになってきました。実はこれ、医学的にも注目されている現象です。
■ アレルゲン免疫療法(allergen immunotherapy, AIT)ってなに?
アレルギーの原因(スギ花粉やダニ)を、少しずつ体に取り入れて「慣らしていく」治療法です。
薬だけに頼らず、体の反応を変えていくのがポイントです。
スギ花粉とダニアレルギーに対して保険適応で治療ができます(2025年時点)
■ 花粉症の治療で、喘息も?
最近の研究では、スギ花粉の免疫療法(舌下錠)を行っていた人が、喘息の症状まで良くなったという報告があります。
特に「花粉とダニの両方にアレルギーがある人」で、ダニによる喘息が起きにくくなる傾向があったのです。
■ なぜ喘息にも効くの?
アレルゲン免疫療法を続けると、Tレグ(制御性T細胞)という、アレルギー反応をおさえる細胞が増えてきます。
この「アレルギーのブレーキ」がきくようになると、ダニやホコリに対する過敏な反応も弱まることがあります。
【知っておきたいこと】
• 免疫療法は効果が出るまでに1年〜数年かかる
• すべての人に効果があるわけではない
• ダニが主な原因の人は、ダニアレルゲン用の治療薬(ミティキュアなど)を使うのが基本
投与が終わることは可能?効果は続くの?
3~5年間の治療を続けると、投与終了後も数年にわたって効果が持続するという研究報告があります。
• 特に舌下免疫療法(SLIT)は、中断後もアレルギー症状の再発率が低いとされています。
• GINA(国際ガイドライン)でも、「喘息の発症を防ぐ可能性がある」とされています。
例:スギ花粉の舌下免疫療法を3年行った後、治療を終了しても、その後2~5年間、症状が抑えられていたケースが報告されています。
新たなアレルギーの発症を防ぐ?
これも注目されているメリットです。
• たとえば子どもにスギ花粉の免疫療法を行った場合、ダニや他のアレルゲンへの感作(アレルギーを起こすようになること)を予防する可能性があるという報告があります。
• これは「免疫寛容」の働きによって、体がアレルゲンに“敏感になりにくくなる”ためだと考えられています。吸入ステロイドとのちがいは?
吸入ステロイドは、症状を抑える薬(コントローラー)で、炎症を抑え続ける限りは有効です。
一方で、免疫療法は体質そのものを改善し、治療終了後も効果が残る可能性がある“根本治療”です。
比較項目 | 吸入ステロイド | アレルゲン免疫療法 |
---|---|---|
効果の出方 | 数日~数週間 | 数ヶ月~年単位 |
継続期間 | 基本的に継続必要 | 3〜5年で終了可能 |
効果の持続性 | 中止すると再燃しやすい | 中止後も数年効果持続 |
新たなアレルギー | 不可 | 予防可能性あり(研究中) |
まとめ
花粉症だけでなく、喘息の発作も減らせるかもしれないアレルゲン免疫療法
症状のない時期から治療を始めることが、未来の呼吸を守るカギになるかもしれません。
免疫療法は、「吸入薬から卒業したい」「根本的にアレルギー体質を変えたい」という人にはとても魅力的な選択肢です。
ただし、「誰にでも効くわけではない」「開始年齢やアレルゲンの特定が必要」「長期治療が必要」といった条件もあるので、喘息と花粉症の両方がある人は、主治医と一緒に長期的な治療計画を立てるのが理想的です。
参考サイト
日本アレルギー学会「喘息診療のエッセンス 2025
GINA Guidelines
舌下免疫療法の効果発現における制御性 T 細胞の役割 | www.jstage.jst.go.jp